残業を悪とするチームを作るだけでは全く足りない

残業を悪とするチームを作ろう - ひがやすを blog
仰っていることに対しては概ね同意。
でも大事なことが欠けている。それは『残業を悪とするチームを作るだけでは全く足りない』ということだ。

残業を悪とするチームを作った後に起こる事象

前提条件として、ひがやすをさんも書かれている通り、社員の稼働率が売り上げに直結する所謂SIerの場合の話。

仕事の質に誇りを持ち、残業を悪とするチームを作ることは、あなたにもできます。

仰る通り、『仕事の質に誇りを持ち、残業を悪とするチームを作ることは、あなたにもできます』は正しい。色々苦労をするだろうけど、残業を悪とするチームを作り、チームの生産性も他のチームより高くすることはできる。しかし、残業をしなくてすむ様な生産性の高いチームを作ったら上司からの圧力はかからないか?と言うとその答えはNoだ。
殆どの人は体感していると思うが、仕事はできる人に優先的に回されるからだ。あなたのチームが他のチームの2倍、いやそれ以上の生産性を発揮したとしよう。
周囲(上司含む)があなたのチームの力を理解していない時なら残業をせずに帰れるだろう。しかし、一度チームの実力が周囲に知れ渡り、理解されれば、起こることは作業の割当だ。
何故ならば、金勘定が出来る人(管理職は最低でもこの程度はできるだろう)は全体の残業時間を減らすには生産性の高い人(チーム)に仕事を割り振る方が効果があることを知っているからだ。
これはチームリーダーだけに起こるものではなく、多くの部下(=多くのチーム)を抱える部署長の様な立場になっても同じで、チームリーダーでは、他のチームの作業を割当られるが、部署長では、他の部署の作業を割当てられるということに変わるだけだ。

残業を悪とするチームを作った後に起こる事象の回避策

回避策と書いているが、Sliver Bullet(銀の弾丸)があるわけではない。ひがやすをさんも以下の様に書いている通り、簡単なことではない。

この問題を解決するには、自分たちのチームを作るのがおすすめ。会社や上司を変えることは難しいけど、仕事上のチームを作ってその中は残業を悪とする文化にすれば良い。

ただ、策が全くないわけでもない。

まず、1つ目。これは王道とも言えるものだが、会社の文化を変革することだ。つまり、『残業を悪とする文化を会社の風土にする』ということだ。これをするには情熱(莫大なエネルギーと言い換えても良い)もさることながら、それ以外にも政治力といった、大抵のエンジニアが必要なスキルとは思わないスキルが必要になる。経験した自分が言うのもなんだが、正直かなりしんどいのであまりお勧めしない。
次に2つ目。これは王道に対する邪道と言えるものだが、成果を喧伝しないということだ。つまり、『チームの生産性が他のチームよりあがり、残業しなくても良くなっても残業する』ということだ。残業が悪なのに残業をするとは此れ如何に?と思うかもしれないが、残業をしなくなるとすぐに成果(他のチームより生産性が高い)が周囲に知れ渡ってしまう。そうなると、上記にあげた様に大量の仕事を振られることになり、生産性をあげる前よりも帰宅するのが遅くなるという事態になることがある。というかなった。その事態を避ける為に、自分たちの作業が終わったら、他のチームの作業を自分から積極的に手伝う。手伝うというとフォローの様に聞こえるが、これは自分たちをその作業にアサインし、責任も自分たちが持つということだ。これをすると、残業せずにさっさと帰っているチームという様に見えず、かつ他のチームを手伝っているので、周囲からの眼も優しいものになる。本質(残業を悪とする文化を会社の風土にする)に対しては何もしていないが、すぐに実行でき、チームも不幸にしなくてすむという意味ではかなり良い策だった。
最後に3つ目として覇道とも言えるものがあるのだが、ここにも書けない様な内容の策だ。

といった様にただ単純に『残業を悪とするチームを作る』だけではその先に待ち受けるものは以前よりも酷い地獄なので、その後の回避策も考えて行動すると良いだろう。回避策も込みで提案すれば、会社の異なる(所謂パートナー)人が含まれるチームでも十分に行えるので、そこの辺りも見越して導入してみると良いだろう。

あわせてよみたい。

残業をしない会社を作るために - GoTheDistance