中島聡 vs 若手エンジニア 討論会 に参加してきました。 #vssatoshi

ATND

1/28(土) 『中島聡 vs 若手エンジニア討論会』に参加してきました。
以下の中島さんの著作の流れから企画されたものみたいです。

といいつつ、中島さんについては以前から知っていたわけではなく、先日 blog を切欠で知った程度で、最初に抱いた印象は“自分と似た考え方の人がいる”といったものでした。

討論会の参加者は予約者は113人、実際に参加した人の数は準備された席から考えると70〜80人位でした。内容は討論会というよりも、質問会といったものでした。

以下、質問のテーマでメモっていたものについて、簡単に記載します。

若手の定義

まず、そもそも若手って何?という話がありました。確かに、何も説明しないと職業毎に若手の定義は異なるものです。中島さん曰く、エンジニアの場合は「会社に入った時、最初に持っていたキラキラしたものを持っているうちは若手。そういった情熱を失ったら若手じゃなくなる」とのことでした。といいつつも、「だからといって自分を若手というつもりはないが」という謙遜もありましたが、これはモノ作りをするエンジニアにとってはとても重要な基準だと思います。

日本とアメリカの違い

日本とアメリカのエンジニアはかなりの部分で違うとのことでした。まず勉強会を例にすると、「日本のエンジニアの勉強会は綺麗(ちゃんとした会場を借りて行う)だが、アメリカのエンジニアの勉強会は喫茶店でコーヒーを飲みながら行う」とのことでした。

他には雇用制度とそれに対する働く人間の意識でも異なるそうです。「アメリカでは黒字であっても不要になれば、解雇することがあるが、日本ではそういったことは許されていない風潮があるのではないか」とのことでした。例としては、「ボーイングは大きな波があり、ペンキ塗りを頼んだら、ボーイングに勤務しているMBAを持っている人が来た。話を聞いてみると「また仕事があれば、戻るよ」と言っていた」とのことで、会社だけではなくそこで働く人もまた仕事があるなら戻るよというノリで働いている様です。日本のIT業界で何次受けといった様に仕事が段階構造になってしまうのは「プライムベンダーが必要な時に必要な人間を雇って、必要がなくなった時にレイオフできないところに問題があるのではないか」とのことでした。日本は正社員を辞めさせるのがとても難しいから、社員ではなく契約社員を集めてしまうのではないかということですね。

この面だけ見ると、アメリカは非常にドライな様に見えますが、人が人を誘うという面でエンジニア同士の結びつきはとても強く冷たい世界ではないそうです。例えば、辞めた時に他の人を連れて行くことはアメリカでは日常茶飯事だそうですが、日本ではそういったことは少ないよね?という話でした。

また、日本は食う為に好きでもないけど、エンジニアをしている人がいるが、アメリカはそういった人たちは非常に少ないそうです。これについての私の意見は『アメリカは日本と異なり、仕事が無くなれば、解雇されるので、安定して勤務することが難しい。解雇しても次の就職先を早期に見つける為にも、自分の市場価値を常に高くしなければならない。エンジニアにとって、市場価値とは高い技術や新しい技術に対する適応性である。市場価値を高くするにはそれらを磨く必要がある。食う為にそういったことをしている人たちは嫌いなものの為にそれらを磨くということは出来ないし、磨けたとしても好きでやっている人たちより磨ける量は劣ってしまう(『好きこそ物の上手なれ』)。その為、日本と異なりアメリカでは、食う為に好きでもないけど、エンジニアをしている人が少ないのではないか』というものです。

優秀な人とは?

中島さんの優秀な人の定義は「自分(=中島さん)より良いコードが書けるやつ、一緒に働きたいと思える人間」とのことでした。人にはもちろん長所と短所があって全ての面で上回るということはないがケース毎にこのコードは良いと感じるものがある人が優秀だということでした。

ただ、この優秀な人については討論会の後の方では「経験はあまり関係なく、吸収力があるかどうか」、「経験豊富なエンジニアと優秀なエンジニアは違う」、「優秀なやつなら、iPhoneSDKを与えられたら、プログラミング書けない奴でも2ヶ月以内にiPhoneアプリを作る」とも仰っていて、前者の「自分より〜」の優秀な人は中島さんが雇う優秀なエンジニアの意味で、後者の「経験はあまり〜」等の優秀な人は雇用は関係なく、優秀かどうかを判断する基準なのではないかと思いました。

評価方法

Microsoft時代のお話として、Microsoftでは上司は部下を“自分が辞めた時に連れていきたい”という視点でランク付けをしていたそうです。これに基づいて、年棒が決まるらしく、最下位の人に対しては最下位なので、改善されない様なら辞めてもらうよと伝え、改善されなければ本当に解雇されていたそうです。この評価方法については「厳しい様に聞こえたかもしれないが、この評価方法は良いと思う」といったことを仰られていて、自分もその評価方法は面白いなぁと思いました。

ただ、納得のいく評価をするには次のことを気をつける必要があるそうです。まず、「最下位の人に評価の後に『きみは最下位だよ』と伝えるのはNG。2、3ヶ月目で相手に『このままだときみはチームで最下位の評価になるよ』と伝えるべき」とのことでした。そして、「目標を達成したかどうかが、その人だけの責任になっていて、かつ客観的に分かるものを目標とすること」だそうです。これらは当たり前のことですが、なかなか日本ではされていないのではないでしょうか。1つ目は評価される部下に改善のチャンスを与える為に早くフィードバックをした方が良いですし、2つ目は上司だけではなく部下にも目標を達成したかどうかが明確に分かるものでなければ納得感といったものはありませんよね。

エンジニアとしての働き方

「仕事が楽しい時はめちゃくちゃ仕事がしたいわけで、そんな時にサービス残業をさせるわけにはいかないから今日はもう帰ってくれなどというのはありえない。経営者は会社と社員のベクトルがあうようにすべきでだ」「ある会社が文系の人を大量にSEにしたことがあった。しかし、数学Ⅲとかの理数系が嫌だと思って文系に行った人をプログラマやエンジニアにしようとした会社は完全に間違っていて、それで合わない仕事を持ってしまった人は不幸だと思う。どんなに大変な仕事でも楽しければ辛くならない」というものでした。

その他

これ以外に東京一極集中に対しての考え方や中島さんの会社の対応についてや、中島さんのご子息を通して、働き方についての考え方等等、上に書いたもの以外にも沢山のお話を聞く事が出来ました。

さいごに

中島さんから「エンジニアになったんだから人生を楽しんで欲しい。日本を救うとかGDPをあげるとかそんな大それた話じゃない。面白いことができるということで頑張って欲しい」との有り難いお言葉も頂け、とても有意義な時間だった。
最後に、貴重なお時間を割いて討論会を開催してくれた中島さん、UIEJの方々、そして参加者の皆さんありがとうございました。